奨学金に苦しむ若者達
私は国政にチャレンジしますが、訴える政策の柱は、サラ金化してしまった奨学金制度の抜本的な改革です。有利子型ではなく給付型の奨学金制度へ改革を進めたいと思います。若者に希望を与える東京を目指します。以下、私が調査した同制度の現状リポートです。
◇
毎月、数万円を卒業後二〇年間に払い続けなければなりません――。
大学で学んだ後、若者やかつて若者だった中年たちを悩ませているのは、大学の学費のために借りた奨学金という名の「日本学生支援機構」からの借金の返済です。奨学金の返納ができず、自己破産に追い込まれる例が続出しています。
自動引き落としの口座に4ヶ月残金がないと、引き落としがされなくなります。実は、その時点で、個人信用情報調査機関に登録されています。返済が滞ると、年利一〇%(借りた時期によって現在は五%)の延滞金が加算されます。延滞が一〇ヶ月を超えると、ある日いきなり一括請求で数百万円を払えと言う請求書が届きます。
例えば月無利子五万円と有利子五万円の奨学金を4年間で四百六十五万円の貸与を受けた人が、返済の延滞を続け、気がつくと五百八十万円の一括請求が家にやってくるのです。
その金額を一括で払えなければ、裁判所で支払い催促の申し立てが行なわれます。二〇一二年度、個人信用情報調査機関への延滞情報の登録は九八七一件、支払い催促の申し立てが九五七一件、強制執行が三二六件でした。三ヶ月以上の滞納をしている人は、三十三万人。日本の奨学金は、そのまま全額を給付するものではなく、借りた分を将来返すローンのようなものがほとんどで、七割は利子付きです。
それでも、学費を家庭の経済力だけでまかなえない人たちは急増し、日本学生支援機構の奨学金を受けている大学生は、全学生の三八・五%。昼間部大学生だけなら、二人に一人以上が奨学金を受けながら、学校生活を送っている状況。
【就職浪人、学費を払うためアルバイトに明暮れる】
「そんなはずじゃなかったのに・・」。高すぎる学費や、奨学金で人生のボタンを掛け違う若者が続出しています。
O君は十八歳。シングルマザーの母のいる実家を出て、一人暮らしをしながら、大学に通う。給付型の奨学金枠は応募したけれど、無理でした。奨学金は月三万円を借りています。でも全て学費に消えるため生活費が足りません。昼と夜、二つのアルバイトのシフトを工夫しながら、授業に出ています。でも、正直大学の授業中に、疲れて寝てしまう。アルバイトで勉強ができない本末転倒の状況です。
A子さんは二四歳。四年生の大学で奨学金を七万円ずつ借りました。卒業したが、就職活動がうまくいきません。卒業後半年から始まる奨学金返済の猶予の申し込みをするか悩んだけれど、「バイトで返そう」と猶予の申し込みはしませんでした。でも、アルバイトで返済金額を稼ぐのがやっと。肝心の就職活動をする時間が取れません。
「私、どうなっちゃうんだろう」。不安は募るばかりです。
C子さんは、二十六歳。奨学金を借りて4年生の大学に通い、卒業しました。大学在学中に、商売をしていた実家が倒産し経済状況が悪化しました。奨学金の返済と実家への仕送りをするため、高収入の仕事先を探しましたが、良条件の就職先が見つかりませんでした。現在、風俗店で働いています。他に選択肢が無いため、やむを得ずの判断でしたが、いつこの生活を止められるのか、わからない。
「何のために大学にいったんだろう」出口の無い迷い道に入り込んでしまったような気がしています。
【高すぎる大学学費と、充実していない支援】
現在、日本の国公立大学の学費は年間五十四万円。日本政府は、これを二〇三一年までに九十三万円まで値上げしようとしています。一方、世帯収入はこの一〇年間で約一万円下がりました。厳しい家計の中、利子があると分かっていても奨学金に頼らざるを得ない家庭が増えています。
日本の学費や奨学金の状況は、世界と比較すると非常にアンフェアなもの。
北欧5カ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)やメキシコ、ポーランド、スロベキアでは、国公立大学の学費は無料です。OECD(経済協力開発機構)加盟三六カ国の中で、年間五千ドル以上の国公立大学の学費がかかる国は、日本と韓国とアメリカだけなのです。
以前は、五千ドル以上の国公立大学学費がかかっていたチリでは、二〇一二年、「学費を安くして」と訴える大学生一二万人がデモを実施しました。その結果、一六年度から、貧困層の子どもたちを中心に学生の3割の学費が無料に。徐々にその割合を増やし、二〇年度には全学生の学費が無料になる法案を可決。
日本中の全ての大学生の学費を無料にするための予算は年間三八〇〇億円。昨年日本政府が米国防総省から買い取ったオスプレイ17機の価格は3600億円とほぼ同額です。
他国の軍隊よりも、自国の未来を作る学生たちに思いやりをもつことが筋なのではないでしょうか。
(文責 増山麗奈)